セシルとフリングス
ザオ遺跡でパッセージリングをうまく操作したルークたちだったが、崩落した人たちが気になりエンゲーブに向かうことになった。 エンゲーブに入るとマルクト兵がキムラスカ兵に暴力をふるっているのが見える。 どうしてマルクトの領土にキムラスカ兵が驚いてものの、恐らく突然の崩落で敵の陣営に囲まれてしまった兵士の一人だろう。 しかし捕虜なのは明らかであり、それをルークが止めようとする前にセシル将軍がやってきて兵士を突き飛ばした。 「ダアト条約を忘れたか!捕虜の扱いもまともにできない屑共め!」 「うるさい!キムラスカ軍の奴らは黙って地面に落ちた残飯でも食ってりゃいいんだよ!」 「貴様!」 マルクト兵の口ぶりにセシルは怒りのあまり腰に駆けた剣に手を伸ばした。しかしその手はフリングス将軍によって抑えられる。 「は、放せ!」 「そうはいきません。彼は私の部下です」 セシルはマルクト軍は礼儀も知らないのかと怒鳴るがフリングスはそれでも私の部下ですと言ってきかない。 するとフリングスは暴力をふるった兵士を捕えるように別の兵士に申しつけ、取り押さえられた兵士はぎょっとする。 「フリングス将軍、自分は何も……!」 「私が何も聞いていなかったと思うか? 敵の将軍に対し、残飯を食えと言い捨てるのは、我がマルクト軍の品位を落とす行為だ。おまえの言い分は、後ほど取り調べで聞いてやる。連れて行け!」 フリングスが指示を飛ばすと、兵士は連行されていく。兵士の姿が見えなくなるとフリングスはセシルに振り返った。 「セシル将軍。私の部下が失礼しました。部下の失態は私の責任です。どうかお許し頂きたい」 するとセシルとフリングスの目が合った。予期せぬことに二人は頬を赤らめ、セシルは言う。 「……も、もう結構だ」 フリングスはその一言で手を離し、セシルは去っていく。 フリングスはそうしてやっとルークたちに気付いたらしく、目を向ける。 「カーティス大佐! 皆さん!」 「フリングス将軍! 今の騒ぎは……」 漸くはっとしたルークがフリングスに訊ねれば、申し訳なさそうに目を伏せた。 「お恥ずかしいところをお見せしました。障気に包まれているこの状態に、部下たちが浮き足立っていて……。ところで皆さんならご存じありませんか?この国は一体どうなってしまったというのでしょうか?」 「そうですね。説明しておきましょう。ここではなんですから、ローズ夫人のお宅を借りましょうか」 ジェイドの説明を聞き終えたフリングスは冷静に受け止めていた。 その一方でふとルークは父の愛人であるセシルが気になる。彼女もきっとフリングスと同じように戸惑っているだろう。 「あのさ、セシル将軍にも説明した方がいいんじゃないか? 本国にも無事だったって知らせた方がいいと思うし」 「あら、そうですわね。でも……」 ナタリアが躊躇いがちに言えば、フリングスが笑った。 「構いませんよ。話は通しておきます」 「ありがとう!」 ルークはお礼を述べ、早速セシルがいる宿屋に向かう。 セシルはナタリアとルークの姿を見ると驚いた。 「これは!ナタリア殿下!それにルーク様も!」 「セシル、一体なぜ捕虜に?」 ナタリアはカイツールでセシルに会っていたため、不思議そうに訊ねた。 それにセシルは口を濁すが、側にいた兵士が自分を庇うためにセシル将軍は捕虜になったのだと説明し、セシルが補足する。 「私とこのハミルトン上等兵は、大地の亀裂で孤立してしまいました。それをあのフリングス将軍が……助けてくれて……。恥ずかしい話です。敵将に命を救われるとは」 「そのようなことをいうものではありませんわ」 ナタリアが命が無事でよかったというようにセシルに言うのだが、彼女の表情は曇ったままだ。 ルークはふと思いついたことを口にする。 「そうだ。キムラスカのみんなにセシル将軍のこと伝えておくけど、何か伝言はないか?」 「殿下たちに伝言をお願いするのは気が引けますが、よろしければアルマンダイン伯爵に私の無事とお詫びをお伝え下さい。アルマンダイン伯爵は恐らくカイツールにおられると思います」 ルークはその答えを意外に思った。 「父上には……いいのか?」 「……は、はい」 セシルは少し戸惑ったような様子で返した。 話が終わったルークたちは宿屋を出るとフリングスがやって来るのが目に入る。 「もしや、カイツールへお向かいになりますか?」 「そのつもりだけど」 ルークが答えると、フリングスはそちらに目を向けた。 「それでは伝言をお願いできませんか。ノルドハイム将軍がグランコクマに戻られた後崩落が始まった為、今では自分がここの総大将となりました。そこで一時的に休戦を申し入れたいのです」 「よい考えですわ」 ナタリアが明るい声を漏らす。フリングスは続ける。 「もしそれが受け入れられるのであれば、カイツールにて捕虜交換をと考えています」 「それって、セシル将軍を解放するってことですかぁ?」 アニスが気遣わしげに言えば、フリングスは頷いた。 「無論です」 「……あまり賛成しませんが」 ジェイドが苦い口調で言えば、フリングスはそちらに目を向ける。 「大佐ならそう仰ると思いました。ですが、あの方は人質には不向きです」 「甘いですねぇ」 ジェイドはやはり渋った様子だった。しかしアニスはケチな自分の考えを述べる。 「いいじゃないですか。敵の将軍を飼っとくほど物資がないってことですよぅ」 「聡明なお嬢さんですね。それでは、よろしくお願いします」 フリングスはそれだけ言うと踵を返して言ってしまった。アニスは一人感激した様子だ。 「はわ〜聡明だって! フリングス将軍はお金持ちですか?」 「そうですね。それなりだとは思いますが、ちょっと遅かったですねぇ」 「何が遅かったんですか?」 「いえいえ。こちらの話です」 どうやらアニスはこの時点では気付いていないらしいとずっと傍観していたガイは思った。 それにしてもこの時点でジェイドは一人だけ気付いていたのかと思うと目敏いと思わずにはいられない。 ルークたちはカイツールに向かい、アルマンダインにフリングスの意向を伝えると、アルマンダインは早速準備に取り掛かると告げた。 それでやっと伝言が終わったと思ったのだが、ナタリアがフリングス将軍に伝えなくてもよろしいのでしょうかとぽつりと言う。それを聞いたアルマンダインはナタリア殿下にご迷惑をおかけしてはと渋ったものであり、ルークが行くついでがあったら伝えてやろうよと口にしその場はそれで収まった。 そしてカイツールを後にしまたエンゲーブにやってきたルークたちはフリングスに伝えた。 フリングスは伝えてくれたルークたちにお礼を述べ、ルークたちはエンゲーブを後にしようとする。 しかし外の物音を聞いたティアが言う。 「……外が騒がしいわ」 「魔物の気配がするですの!」 「気になります、いってみましょう」 ジェイドに促され、ルークたちが外に出ると魔物にマルクト兵が襲われているのが見えた。 フリングスがやってきて魔物に応戦するが、魔物は何処からともなくまた現れる。 ルークたちも加勢し、魔物を一掃したかと思った時フリングスの背後に魔物が飛びかかった。 ルークが息を飲むと、セシルがその魔物の攻撃を抑えこんだ。フリングスがその魔物を真っ二つに斬る。 「セシル将軍!」 「……これで、貸し借りは……ナシだ……」 フリングスはセシルの言葉を受けて、ローズ夫人の家に行くことを勧めた。ルークたちもそこへ向かうとフリングスはセシルを咎める。 「どうして宿を出られたのです。危険ではありませんか」 「この街が魔物に落とされれば、宿に隠れていても意味がない。それに私は軍人だ。危険を避けるわけにはいかない」 「あなたは将官なのですよ。二等兵を助けるために危険を犯したり、敵将である私たちを助ける為に、無茶をするのは……」 フリングスはそういうが、セシルは凛とした目を向ける。 「貴公こそ、敵である私たちを助ける為に、地割れで取り残された危険な場所へやってきたではないか」 「あれは……」 「敵将である私を信じ、自由を与えたり……。……貴公は馬鹿だ」 「……お互い様です」 すっかり二人だけの世界になった二人を仲間たちはまだ黙って見ている。仕方がなく、ガイは口を開いた。 「……出るぞ」 「……だね」 アニスが答え、ナタリアは不思議そうに首を傾げた。 「あら、どうしてですの」 「にっぶいなー。もー。とにかく出るの」 ナタリアはアニスに連れられるようにしてその場を後にする。 しかしルークは気になった様子でローズ夫人の家に振り返った。 「なあ。だけどあの二人、敵同士だろ」 「どちらかが軍を辞めれば、見込みがない……訳でもないと思いますが」 ジェイドがルークの悩みを解消する一つの道を提示すると、ナタリアはやっと気付いた様子で声を上げる。 「え? まあ! あの二人お互いを意識しておりましたの!?」 「……ナタリアって女とは思えぬ鈍さだ」 アニスが呆れたように言い、ティアは内心気付かなかったと恥じ入って先程から黙っている。 ルークは次にガイをちらりと見た。ガイは黙っているものの、出るぞと声をかけたのだから勘が鋭い方なのだろう。 しかし少し意外だった。メジオラ高原でランチャーを設置する時は空気を読むなんてことをしないのに、こういう時はちゃんと読むのだなと妙に感心してしまう。 後に、セシルがカイツールに無事に到着したと聞いたルークたちはセシルに会うことにした。 合って間もなく、セシルはルークたちに短刀を向ける。 「申し訳ないのですが、この短刀をマルクトのフリングス将軍に渡して欲しいのです」 「まあ……。あの、それは……」 ナタリアが酷くうろたえたような顔を浮かべた。それにルークは首を傾げる。 「何だ?どうしたんだ?」 「短刀を渡すことに何か意味があるの?」 ティアも要領を得ない様子であり、アニスが言う。 「ああ、ティアは魔界育ちだっけ。ルークはお子様だからいいとして」 「女性から男性に短刀を渡すのは絶縁の証です」 アニスの言葉に腹を立てていたルークだったが、ジェイドの言葉を受けて絶句する。 つまりそれはフリングスと別れるという意味だろうか。ルークがセシルに目を投げるが、彼女は言った。 「……宜しくお願いします」 セシルに頭を下げられて、ルークは仕方なくその短刀を受け取った。 重い足取りでフリングスのいるエンゲーブに向かう。 「これは皆さん。折角来ていただいたのですが、私はこれからエンゲーブの住民と話し合いを持つ為にケセドニアへ向かわなければならないのです」 「あの……フリングス将軍……」 ルークは今のフリングスに言うのには気が引けた。けれどルークの横にいるジェイドはどこ吹く風だ。 「セシル将軍から渡すように言われました。さあ、ルーク」 (……よくさらっとそういうこと言えるよな、こいつ) ルークはジェイドに恨みがましい様子で睨んだ後、フリングスに短刀を手渡した。 フリングスはそれを受け取って茫然と呟く。 「これは……。ジョゼット……」 悲しみに打ちひしがれたフリングスからルークは目を逸らす。 しかしフリングスはルークたちに少し待ってもらうよう口にし、手紙を書いてルークたちに手渡した。 ルークたちはまたセシルの元に行くためにカイツールに戻ることになった。 そしてフリングスの手紙を読んだセシルはケセドニアに連れて行ってほしいとルークたちに頼んだ。 「フリングス将軍に呼ばれているんですか?」 「……はい。やはり自分の口でお断りした方がいいようです」 確認を取るようにジェイドが訊ねれば、セシルが真剣な面持ちで答えた。ルークはそれを見て渋々口にする。 「……わ、分かった」 ルークはもうすでに面倒だな、と思い始めていた。 先程からなんだか言いように二人にこき使われているようなそんな感覚につい疲労した顔つきになってしまう。 ガイはやっぱり面倒な顔つきになってるな、ルークの奴と思うがここが正念場だ。 「なんかどんどん面倒なことになってる気がするぞ」 「でもお互い真剣なのですわ。協力してあげませんと」 先にアルビオールにセシルが向かった事をいいことにルークがとうとう文句を垂れた。 それにナタリアは非難するように声を上げたが、ティアが首を傾げる。 「協力って、どちらに? どう協力するの?」 「だよねー」 「それは……そうですわね」 悩む女性たちにジェイドはまあ、深入りせずに適当にお茶を濁しておきましょう、どうせ当人同士にしか結論を出せないことですとあっさりと述べる。 それに仲間たちは苦い顔になった。 ケセドニアに到着し、アスターの屋敷に行くとエンゲーブの住民を村に戻す考えをアスターが述べた。 崩落してしまって外界との連絡は愚か、食料も調達できない今、エンゲーブの住民を戻すことで食糧を調達しようという案に誰も異を唱えるものはいなかった。 フリングスはその話し合いをすますと、ルーク立ちに出て行ってほしい様子を見せる。 アニスは最後まで居座ろうとしたが結局フリングスとセシルに見られて、そこを後にした。 その後未練がましくアニスは扉に耳を立て、ルークも一緒になってやっていた。 「立ち聞きなんて最低だわ」 「二人とも恥を知りなさい!」 「だってさ、心配だからさ……」 「私は野次馬根性ですv」 ティアとナタリアが聞く耳を立てる二人を咎めるが、ジェイドは気持ちはわかりますと全く叱る様子を見せない。 ガイは全くこのおっさんはと内心呆れていると、扉に人が近づく気配がある。 ルークとアニスが慌てて避けると中からフリングスが出てきた。しかしセシルが出てくる気配がない。 ルークたちが部屋に入るとセシルは指輪を渡されたと口にし、それを返すようにルークに渡す。 「え! いや、だけど……」 「……お先に失礼いたします。ありがとうございました」 セシルはそう述べると、ルークの横を通り過ぎていく。ルークはセシルがいなくなった部屋で頭を掻いた。 「……俺、一応王位継承者なんだけどな」 「……王族は、民に尽くすのが仕事ですわ」 ナタリアがルークに言い聞かせる。しかし面倒だと思っているルークは大袈裟に空を仰いだ。 「……あーあ。フリングス将軍受け取ってくれるかなぁ。もうめんどくさくなってきた」 「いやー、燃え上って来たよ!」 アニスは一人熱い様子だが、他のメンバーたちは微妙な顔を浮かべる。 その中でガイは無表情で、ジェイドは普段と変わらない胡散臭い笑みを浮かべていた。 フリングスがいるカイツールに向かうと、フリングスはルークの姿を見るなり悟ったようだった。 「彼女から指輪を返すように言われたんですか?」 「……う……。そうなんだけど……」 ルークが苦い様子で言うと、フリングスはルークが予想していた通り、指輪を受け取ることはできないと言ってきた。 いつまでも待つとセシルに対する熱い気持ちをルークに述べて、セシルにその指輪を渡してほしいと頼んでくる。 しかしルークは今までずっと思ってきたことを口にした。 「なぁ……一言言っていいか? 俺、あんたたちの伝言役(メッセンジャー)じゃないんだけど」 「も……申し訳ありません」 フリングスは心底済まなさそうに頭を垂れた。それを見るとこれ以上文句は言えない。 「でも、本当にどうするの? このままセシル将軍のところに行っても、受け取ってくれるかどうか……」 「何度も通うしかありませんわね」 「……はあ……。気長に行くか……」 「人の恋路に首を突っ込む物ではありませんねぇ。はっはっはっ」 ティアが悩んだ様子で口にすれば、ナタリアが少し疲れた様子でいい、ルークが諦めたように口にした。 けれどジェイドの言葉に皆押し黙る。しかしその中で一向に表情を変えないガイは何を考えているのかルークは少し気になった。こうも長引けば、ガイなら放っておいて先に行くぞ、くらいは言いそうなのに文句の一つも言わない。 カイツール軍港にいるセシルの元に行くと、彼女はルークから指輪を向けられて目を伏せた。 「……指輪はお預かりできません」 「どうしてですか?フリングス将軍は気持ちを受け入れてもらえなくてもいいから待ってるって言ってます」 ルークが訴えてもセシルは目を伏せたままだった。重い沈黙が落ちそうになるとアニスが口を開く。 「……だけどさ、正直、好きでもない男からそんなものもらっても、キッツイよね?」 「嫌いな訳ではありません!」 「あれれ……」 アニスの言葉に急に声を上げたセシルに皆少し驚いた。セシルは口を苦くする。 「……ご存じない方もおられるかもしれませんが、我がセシル家は、爵位を取り上げられ断絶した家なのです。私はセシル家を復興させる為、軍に入りました」 「そういえばそんな話も聞きましたわね。詳しいことはお父様も教えて下さらなかったですけれど……」 ナタリアが睫毛を翳らせる。ルークもつい表情を暗くする。だから父上と、と考えているとセシルは言った。 「私の伯母のユージェニーは、マルクトの伯爵家へ輿入れしました。その後戦争が起きた時、伯母はキムラスカを裏切ったと汚名を着せられ……。ですから、フリングス将軍のお気持ちは嬉しいのですが、私はマルクトに嫁ぐ訳にはいかないのです」 これ以上セシルに掛けるべき言葉はなかった。指輪を渡すこともできず、一行は彼女の前から立ち去る。 しかし平和条約が結ばれた後、ルークはもうセシルが悩む必要はないと思い、彼女の元にまた訪れた。 セシルもそれが分かっているのか、ルークに軽い挨拶を交わすと口にする。 「キムラスカとマルクトが、平和条約を締結したそうですね」 「ああ。これでもうセシル将軍がフリングス将軍を拒む理由はなくなったぜ」 ルークははっきりと告げるが、セシルの表情は曇ったままだった。 なぜセシルがそんな顔をするのか分からないでいると、ジェイドが言う。 「あなたの伯母であるユージェニーのことを考えて、フリングス将軍のことに踏み出せないのですね?」 「私が軍を捨て、マルクトへ嫁ぐとなれば、セシル家は再び売国奴と蔑まれることになるのではと……」 セシルはジェイドの答えに頷いた。しかしナタリアが凛然とする。 「そのようなことはありませんわ。マルクトに嫁いだものが、マルクトを守ろうとするのは当然です」 「殿下は清廉でおられるから。ですが、世間はそうは考えません」 セシルが暗い顔で言う。ルークは両思いならくっつくべきだと思い、言葉を紡ぐ。 「……だったらさ、今度こそキムラスカとマルクトの平和の象徴になればいいんじゃないか」 「セシル将軍とフリングス将軍の婚約を、象徴にするってこと?」 ユージェニーとはガイの母の名前だ。その母は和平の証として嫁いだ。 今度はセシルがそうなればいいと思ってルークは口にし、ティアが訊ね、ジェイドが口にする。 「いい宣伝にはなりますね。平和条約も締結された所ですし。外殻降下後の、人々の希望になるかもしれません」 「そうですわ! セシル将軍がフリングス将軍を好いているというのなら、私がお父様にこのことをお知らせとしてとりまとめますわ」 「……でも!」 セシルはナタリアの言葉を聞いてもまだ迷った様子だった。ルークは追い縋る。 「俺も好きなら結婚した方がいいと思う。だから、指輪を受け取って下さい。セシル将軍!」 「……わかりました。指輪はお預かりします。ですが陛下のお耳に入れるのは、この世界が落ち着きを取り戻してからにして下さい」 セシルはそう述べると、やっとルークから指輪を受け取った。ルークは嬉しさとやっと肩の荷が下りた解放感に充たされた。 そうしてアブソーブゲートでヴァンを撃破して一か月がたった頃、ルークがバチカルの港に向かう途中で朝顔を合わせたセシルに出会った。 「その節はありがとうございました。ナタリア殿下がお口添えを下さったおかげで、陛下も私とアスランとの婚姻をお認め下さいました」 「よかったですの!」 ルークが肩に乗せていたミュウが跳ねる。ルークはミュウが落ちないように手で支えてやってから、セシルに目を向けた。 「式はいつになるんだ?」 「私はまだアブソーブゲートの調査が残っております。この任務が終わりましたら軍を退役しますので、その後ということになります」 「随分先だな」 ルークがつい眉を顰めてしまう。けれどセシルは微笑を浮かべる。 「でも気の早いことに、我が家ではフリングス上軍へ渡す衣装の作製が始まりましたわ」 「衣装? 結婚式のか?」 ルークが首を傾げると、セシルは首を振った。 「いえ……そういう訳では。花婿の為に花嫁が針を入れた衣装を持って嫁ぐと、幸せになれるという故事です。形式化していて、私は一針しか入れていないのですが……」 「へえ……。そういうことは、俺全然知らないからな。とにかく、幸せに!」 「……はい。ありがとうございます」 ルークが純粋に祝福すると、セシルはルークにお礼を述べて去って行った。 しかし結局この結婚はレプリカの問題やヴァンが復活して世界情勢が非常に悪いということで先延ばしになった。 しかもヴァンを倒した後もルークとガイが三カ月旅を共にするということで、式典が開けなかった為、また延期になったらしい。 そしてルークがセシルがやっと籍を入れたと聞いたのはその旅が終わって一か月たった頃だった。 あとがき すいません。結構、フリングスとセシルの関係が好きだったりします。 フリングスとセシルの間を橋渡ししたせいか、ルークは本編でフリングス将軍が死亡する時すごい気にしていたようだったし、ガイの話にやりたいなと思ったので補足で書きました。でも目茶苦茶長いですね。このサブイベント長過ぎ、とサブイベの所為にしてみる。 なんだかフリングスの時と言っていることが違う感じになっていますね。 フリングスはフリングスでまたキムラスカの政略かもしれないと非難を浴びている感じです。 嫁いだユージェニーの血を引くガイはマルクト帝国に弓を引いていると大半は思っているので余計止めた方がいいという風潮になっています。それに加えて情勢がよくない。 そこでお互いもう少し自国を守るために尽力しようという結論に至った二人は、復活したヴァンを討伐するまでは婚儀を上げないことにします。ヴァンがいたら結婚どころじゃないですからね。 そうしてやっとヴァンを倒したぞ、と思ったらガイがルークと旅に出ると言いだしました。仮にも王位継承者で復讐相手であるルークを連れた旅に誰もが何かあるんじゃないかと口にし出して、結婚できる空気じゃありません。それにヴァンを倒したというのに式典が開かれないのはあり得ない。全然平和になったって感じがしない。そこでまた泣く泣く結婚を伸ばす二人。 そうしてガイが戻る頃にはすっかりフリングスは考え直せと周りから言われるようになっていました。しかし式典が開かれ、ガイも周りを説得して漸くフリングスとセシルは籍を入れることが出来ました。 結婚が長引いた大半はガイの所為だと言ってもいいのですが、フリングスはガイに恩義を感じてしまいました。別に感じなくてもいいのにね。こんな紆余曲折があったんだと思って下さると嬉しいです。 あとうっかり言い忘れていたんですがガイが何でフリングスを助けたのかというと、ルークが悲しんだからです。基本ガイはルークが死んで悲しんだ人をなるべく救うようにしています。 シェリダンはさすがに無理でしたが、フリングスは頑張ったと言う感じです。 別にセシルやフリングスのことを考えたと言うよりただルークの為です。それで本性が明らかになった後は純粋に二人に結ばれてほしい+ルークもそう思っていたからといった具合です。結局はルークなのか… 搗色に戻る
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