鬼胎を抱く
ルークが次に目を開いた瞬間、水の中にいた。 ミュウは叫び、ルークは驚いているとティアが濡れたりしないわ、と落ち着いた様子で言った。 ティアはセフィロトが吹きあげる力で、水を弾いてくれると濡れない理由を教えてくれたのだが、ルークは疑わしく泉の中から出る。 するとズボンは濡れておらず、ティアの言った事にルークは内心酷く感心した。 そうしてアラミス湧水洞の外にようやく出ると、こちらに向かってジェイドがやってくるのが見えた。 「ああ、よかった。入れ違いになったかと心配していました」 「どうしたんだ?」 ルークが普段の調子で訊ねれば、ジェイドはティアに向かって答えた。 「イオン様とナタリアがモースに軟禁されました。それで、ティアの力を借りようと思いましてね」 「二人を助けようぜ」 ジェイドの毛嫌いっぷりに気付かないのかルークはその話に割って入ってくる。 ジェイドはルークを瞥見し、ルークはやっと自分はジェイドの信用が落ちている事に気付いた。 「ルーク。一度失った信用は、簡単には取り戻せないわ」 「……わ、わかってるよ」 ティアにそう言われ、ルークは気まり悪く目を逸らす。 ジェイドは一度港に行きましょう、と二人に声をかけ、そちらに向かうことになった。 港に着くと、そこにはタルタロスが停泊している。 さすがに陸上装甲艦なだけはあり、かなりでかい。遠目から見てすぐに分かるほどだ。 ジェイドはそちらに向かって歩いていき、ルークたちもその後を追う。 するとタルタロスの昇降口が開き、中から金髪の青年が出てきた。 ルークは確かあの森でイオンを迎えに来たガイだとじっと見る。なぜ彼がここにいるのだろう。 しかし彼はルークなど目にも留めず、ジェイドに用件だけを述べた。 「ジェイド。一度、タルタロスはドッグで直した方がいい。今は戦争に備え、グランコクマは要塞となっているのだからな」 「戦争だって?!」 ルークがぎょっとして声を上げると、ガイがルークの方角を見た。 「ジェイドから聞いていないのか。キムラスカの王女と導師イオンが捕えられたのは、戦争を起こすのに邪魔だからだ」 「アクゼリュスが消滅したことをきっかけに、キムラスカは開戦準備を始めたと聞いています。恐らくナタリアの死を、戦争の口実に考えているのでしょう」 ルークは暗い顔をし、黙りこむ。ガイは一度向けていた視線をまたジェイドに戻した。 「タルタロスだが、ケテルブルクでドッグを借りるくらいしか方法はないぞ」 「…そうでしょうね。それで、グランコクマの件ですが受けてくれますか」 ジェイドは僅かに目を伏せ、すぐにまた赤い目を上げた。 それにガイは相変わらずの仏頂面で告げる。 「俺からジェイドが生きているといことを伝えておくが、実際に見ていない評議会の連中は生きているとは思わないだろう」 「それでも言わないよりはマシですよ。それに私は生きていると知っている人の人数は多い方がいいですから」 ガイは了解した、というとそのまま下がろうとする。しかしルークはその腕を掴んだ。 「ちょっと待てよ。ナタリアとイオンを救うの手伝ってくれねーのか?前はイオンを助けてくれたじゃねーかよ!」 「…」 黙ったガイに対し、ジェイドはそれを可笑しそうに見る。 ルークはそれに不思議に思っていると、ガイはルークの手をそっと離した。 「俺には別の仕事がある」 「あ、おい!」 ガイはルークの制止を振り切って行ってしまった。 なんだよあいつと憤慨するルークの横でジェイドは肩を竦めた。 「まあまあ。ガイに仕事があるのは本当ですから。それに彼だってキムラスカの姫君になんて会いたくないと思いますよ?」 「…なんでだよ?」 聞き返したルークに、ティアも不思議そうな顔をする。 「彼には何かあるんですか?見た所、軍人のようだけれど…」 「それは私の口から言うことではありません。ですがガイを信用するのだけはやめた方がいいと思いますよ」 ジェイドはルークに目を向けてそう言った。ルークはますます分からない。 しかしジェイドは、ダアトに行きましょう、アニスを待たせてますからといって歩きだしてしまった。 ダアトに到着する頃には日が沈みかけている。 今夜は一晩宿に泊まることにし、ジェイドはルークと二人部屋になると脈を診せてほしいと言った。 どうやらジェイドでも完全同位体というのは珍しく、体に何かの変化が現れた場合に備えたいということだ。 アッシュの目を通じて、仲間と旅をしていたルークはジェイドがそう零していたことを思い出し、快諾し、お礼を言った。 お礼を言われたジェイドは、瞠目して普段の彼から見ればかなり驚いていた。 翌日になってアニスと合流を果たした。 彼女が得た情報を元にナタリアとイオンを救出し、ダアトを後する。 そして、タルタロスでガイの忠告通りケテルブルクでタルタロスを停泊した。 そこでジェイドの出身地はケテルブルクで妹がいたことが明らかになった。 今度はルークが驚く番であり、ジェイドに妹がいたのはかなり意外だった。 しかも美人で、性格もまともであり、知事である。 ルークはジェイドの妹であるネフリーに後でまた一人で会いに来るように言われ、会いに行く。 そこでネフリーから語られたのはジェイドの過去だった。 ジェイドが初めて人間のレプリカを作るきっかけになったネビリム先生のことを聞いてルークは悩む。 ジェイドはルークが自分の過去を知ったと分かると、ルークに誰にも言わない事を約束させた。 ガイがアクゼリュスの住民を移動させた後、グランコクマに戻った。 そこまでは良かったのだが、ピオニーはアクゼリュスが消滅したと聞くとガイにジェイドを探すように命じたのだ。 誰もが死亡したという中、ピオニーだけは生きていると頑なであった。 ガイは人使いが荒いと思いつつも、これは好都合である。 しかもピオニーの無茶ぶりにゼーゼマンがせめてダアトで情報を集めた方がいいだろうと口添えしてくれたおかげで、ガイは怪しまれる事なくダアトに向かえた。 ダアトになぜ行けとゼーゼマンが言ったのかといえば、中立であるダアトの方が情報が入りやすいからである。 何よりダアトが預言を利用して世界を牛耳っている世の中だ。 ダアトに行けば、両国が何をしようとしているのか、果てやダアトは何を企んでいるのか分かる。 無論ガイは情報収集に勤しむより、アッシュの姿を捜した。 結局演算機がなかったせいで、まるで封印術のような代物になってしまったあの装置をアッシュに付ける為だ。 ガイはジェイドにいつから大爆発(ビッグバン)が始まっていたのか聞いたことがある。 大爆発が始まったと思われるのは双方共に音素乖離を起こし、存在が希薄になった所らしい。 ガイはそれに心当たりがあった。それはアッシュがルークをケセドニアに呼びつけた時のことだった。 『何か変わったことは起きていないか?意識が混じり合って、かき乱されるというか……』 つまりこれが第一段階なのだろう。ガイはそう考え、アッシュを探す。 するとタルタロスがダアトの港に停泊するのを見て、アッシュがタルタロスから下りるのを見た。 アッシュはジェイド達と別れて、船には乗ろうとせずどこかに行った。 ガイもその後を追い、そしてアッシュはダアトへと続く岬に向かって行く。これは好機である。 ガイは人がいないのを確認すると、アッシュを背後から襲いかかった。 アッシュは突然ガイに切りかかれて、驚きつつも避ける。 ガイはそのすばしこさに舌打ちしたい気分だった。 (全く、こいつは俺の邪魔ばかりする。少しは喚くのをやめればいいものを) 冷やかに見下ろすガイにアッシュは身構えつつ、予想通り声を上げた。 「てめえ!こんなことしてただで済むと思っているのか!?」 ガイの思った通りに喚くアッシュの姿は失笑を買うを通り越して、ただ疎ましいだけである。 ガイは脳裏でじりじりと何かが焼けているような気がした。 こいつが憎くて憎くて、殺したい。しかしそんなことをすればルークは悲しむだろう。 最後までルークは、オリジナルの命を優先したのだ。 「聞いているのか!てめえは一体何者だ!?」 「…聞いてどうするんだ、ファブレ家のご子息様」 ガイが淡々とした調子で言っても、この一言にはかなりの効果があったらしくアッシュは黙り込んだ。 そしてガイはアッシュに猛攻を仕掛ける。 アッシュは先程の言葉で余程動揺したのかまるで動きがなっていなかった。 あまりにも柔弱なアッシュに、ガイは反吐が出る。 アッシュは武器をガイに奪われた揚句、ガイに腹部を殴られた。 痛みで意識が朦朧とするアッシュの腕を乱暴に掴みガイは例の装置を早速アッシュに付けた。 この装置を付けると、体力は奪われ、譜術も使えない。 アッシュがかなり弱くなるのは明白だった。 しかしこいつのことだ。 また歯を食いしばって、何事もないような顔をしているのだろうとガイは仄暗く考える。 「ぐっ…。貴様、何をつけやがった!?外せ!この腕輪を外せ!!」 「壊せば簡単に外れるぞ。命が惜しくないならそうやって外せばいい」 アッシュはどういうことだ、と声を上げたがガイはアッシュの傍に彼の武器を放って、歩きだす。 アッシュは圧倒的に力量の差を見せられ、しかも腕には変な物を付けられ、最大の屈辱だった。 (あの男…、次会ったときはぶっ殺してやる!) 壊せば簡単に外れる。それは明らかにアッシュを馬鹿にした言葉だった。 命が惜しくないというのは、一体どういうことか測りかねるが、奴が自分を嫌っていることはよく分かる。 アッシュはガイが放った自分の武器を鞘にしまった。 そして舌打ちし、立ち上がる。 なんだか体が重くなったような気がするが、自分は止まるわけにはいかないと言い聞かせてアッシュは進みだす。 全てはナタリアと、この国を守るためだ。アッシュはそのためだけに頑張っていた。 ガイはアッシュに装置を付け終えると、アニスが青い顔をして港に入ってくるのが見えた。 それを見ただけで、イオンとナタリアが捕まってしまったということが分かる。 しかし、二度も説明をさせるのは面倒だろうし、自分も聞く時間が惜しいと思い、アニスについていく。 そこでジェイドと再会を果たし、アニスから事情を聞いた。 「しかし困りましたね。タルタロスの走行機能の調子が悪くて、ナタリアたちを助けたとしても我々には動く為の足がありません」 「えー、マジですかぁ!?」 アニスが大仰に驚き、ジェイドは肩を竦める。 本当に参った様子のジェイドに、ガイは口を開いた。 「俺が応急処置をしよう。お前がグランコクマに帰ってこれないとあれば、陛下の命に背くことになる」 「陛下もたまには気の利いたことを言いますね」 ガイへの命令をジェイドは気の利いたことだと言っていて、アニスは顔を顰めた。 毎度のことながら、ガイとジェイドの薄ら寒く、腹の探り合いの関係にアニスは疲れを覚えるようになっていた。 しかもアニスがガイを知る以前からずっと続いて来た関係と聞いて余計アニスは耐えられないと顔を青ざめる。 それを平然とするジェイドもジェイドだが、感情の起伏がまるでないガイもガイである。 「えーっと、ガイって音機関に詳しいの?」 「ある程度の知識がなければ、困るだろう」 それはそうだけど、とアニスが言葉に詰まるとガイはすたすたとタルタロスの中に入っていく。 アニスはガイがいなくなったのを確認するとジェイドを見上げた。 「大佐はガイが詳しいって知ってました?」 「いいえ。聞いたことがありません。しかし処置をすると言った以上、してくれるのでは?」 「…そーですか」 アニスはがくりと肩を下げる。そんないい加減なと突っ込む気力すらない。 しかしアニスは何故だかガイなら本当に処置が出来てしまいそうだな、と薄ら思った。 ガイは処置を終え、外に出てルークの姿があった時は内心安堵した。 無事でよかった、と思いながらジェイドにさっさと報告してグランコクマに帰ろうとする。 普段の様子を考えて、ガイが去ろうとすればルークが手を掴んできた。 ジェイドはそれに目を見張り、口端を上げる。ガイはジェイドが楽しんでいると分かった。 今まで自分は誰かに腕を掴まれたことはなく、しかも相手はルークだ。 一体どんな態度をとるのかジェイドは面白がっているのだろう。 前回イオンを迎えに行くに辺りルークを見た自分はどんな反応だったかジェイドならイオンに聞いている筈だ。 ジェイドは自分がファブレを憎んでいるのか確かめようとしている。 もし憎しみを出せば、ピオニーにとって邪魔な人物とみなす。 かといって憎しみがなさ過ぎても、マルクトを恨んでいるのかと怪しむ。 どちらに転んでもいい結果はない。だからガイはいつも通りの反応を返し、その場を後にした。 ルークの拗ねて怒る声が背後から届いた時は、その懐かしい声につい笑みがこぼれそうになった。 それは何十年ぶりの作り笑いではなく、自然の笑顔だっただろうか。 しかしガイは感情を殺すと決めた。無機質な顔が張り付いて、笑顔など浮かべない。 ケテルブルクを出て、ローテルロー橋にタルタロスを接岸し、首都グランコクマに向かうことになった。 要塞都市になっているグランコクマへ六神将に奪取されたタルタロスにアクゼリュスで死亡したとされたジェイドが乗っていたら、攻撃をされてしまうという理由からだった。 ルークたちはテオルの森に徒歩で向かい、ジェイドだけはテオルの森を通っていいと言われた。 アニスは導師イオンの力を使って通ろうとしたが、マルクト兵の答えは駄目だの一点張りだった。 アニスはその答えにむくれるが、イオンはアニスに仕方がないと宥めて、ルークたちは大人しくここで待つことにする。 イオンが入れないほど緊迫状態なのか。 ルークはそう思うと、いつかのようにグランコクマに行くのが恐ろしくなった。 グランコクマにはあの亡霊がいる。ナタリアも彼女にしては珍しく暗い顔でルークの傍に腰かけていた。 「ルーク。亡霊のこと、覚えていらっしゃいまして?」 「…確か、生きてるんだよな」 ナタリアは目を翳らせて、ええとだけ口にした。沈黙が落ちると、再びナタリアが言う。 「わたくしはあなたのことが心配ですわ」 「え…、なんでだよ?」 「あの方の噂は悪いものばかりなんですもの。それにアルマンダイン伯爵からその亡霊の話をお聞きしたことがありますわ」 アルマンダインと言われて、ルークはカイツールを任されているあの男かと思いだす。 彼は恐らくケセドニアの紛争に出ていて、それでその亡霊に会ったのだろうとルークは思った。 「以前ケセドニアの北部で起こった戦争にカイツールいた兵も僅かながら協力に向かいましたわ。そこで伯爵は見たそうなのです。人を殺しても表情一つ、眉ひとつすら変えずに殺めて行く亡霊の姿を」 ナタリアは僅かに瞼を閉じ、すぐに萌黄色の目をルークに向けた。 「あれはどう見てもキムラスカを憎んでいるようだった、とアルマンダイン伯爵は話していました。だから、わたくし、グランコクマに着いたらあなたがその亡霊に襲われてしまうのではないかと怖いのです」 「お前こそ自分の心配しろよ。マルクトはキムラスカを快く思ってない人たちが多いって聞くぜ」 ルークはナタリアの不安を少しでも緩和させようと、小さく笑って見せた。 ナタリアはそうですわね、と同様に少しだけ笑ってくれたがルークには分かる。 自分の不安がナタリアに伝染している。 ナタリアは一番亡霊のことを気にかけてきたのだからルークと同じ気持ちになるのは当然のことだった。 けれど、どうやってナタリアを励ましていいのか分からず、言葉は宙を舞う。 そのうち二人は黙りこみ、暗い空気に覆われた。 それを横目で見ていたアニスはルークってホント手にかかるんだからと内心呆れる。 かといって自分がどうにも出来る問題ではないし、実際にガイは憎んでいないかというと憎んでいるように見える。 なぜならガイが感情を失ったのはホド戦争でファブレの手によって家族が殺されたからだ。 憎い仇の息子となれば、さすがの彼も心中穏やかではないはずだ。 そうなるととんでもない地獄絵図がアニスの中で浮かび上がり、慌ててぶんぶんと首を振る。 洒落にもならないとアニスは顔を青ざめた。それを見たイオンは少し首を傾げる。 「どうしました?アニス」 「ちょっとあの伯爵がどうなっちゃうか考えたら怖くて…」 アニスがルークには聞こえないように小声でイオンに返した。 ルークはアニスの声が気子た様子はなく、沈んだ顔で黙っている。 「…そんなに不安にならなくても、彼は普通だと僕は思いますよ。いつもの調子でいると思います」 「イオン様はなんでそんな呑気なんですかぁ〜」 気を揉んでばかりいるアニスはついイオンを責めるような発言をする。 イオンはそれに表情を曇らせた。 「そうですね。僕はいつもアニスに迷惑をかけてばかりだ…」 「って、マジに受け取らないで下さいよ!もう私、イオン様の導師守護役を三年もやってるんですよ。イオン様に振り回されるのに、もうなれちゃいましたv」 笑って可愛らしく首を傾けたアニスに、イオンは申し訳なさそうにアニスを見た。 「アニス…」 「だから気にしないで下さい。ちょっと私、よく伯爵関連で疲れるから弱気になってただけですから。特に大佐がからむとすごく疲れるんですよね〜、あの二人」 二人の間で四苦八苦するアニスの苦労を見てきたイオンはおかしそうにくすくすと笑ってしまった。 アニスはイオン様笑い事じゃないですぅーとむすっと頬を膨らませるが、イオンは止まらなかった。 「すみません。でも今回は大丈夫だと思いますよ。彼ならきっと分かってくれる」 「…そうですかぁ?」 ルークを少し見てイオンはまたガイは大丈夫だと言った。アニスはそれが疑わしいのだが、イオンは目を細める。 「僕も驚いたんですけど、彼は思った以上に和平を結びたいという心が強いんです。人の何倍も。だからアニスが心配しなくても大丈夫ですよ」 「そう言われても、微妙ですー」 あんなに徹底的に感情を殺しておいてルークを殺したくない筈がないのだ。 アニスにはあれが機会をうかがっているようにしか見えない。 するとマルクト兵がこちらに歩み寄ってくる。 白髪でクリーム色をした目に肌が浅黒く、精悍な顔立ちをした男がルークの前にやって来て頭を下げた。 「ルーク様ですね。私はアスラン・フリングスと申します。カーティス大佐からあなたをお迎えに上がるように頼まれ、参りました。私の後についてきて下さい。グランコクマにご案内いたします」 「…分かりました」 ルークは強張った顔で頷いた。そんな顔をすれば相手は気遣うだけだというのに、今のルークにはそれが分からない。 アニスはこれは相手にもルークがガイの件で怯えているのが伝わるだろうなと思った。 そしてルークは硬い表情のままフリングスの後についていく。なんだか動きすらぎこちない。 ルークは内心グランコクマに入るなんて心穏やかではない。 不安と恐怖で押し潰されそうだ。 謁見の間に入れば、亡霊に会わない筈がない。 ルークは底の知れない闇に落ちて行くようで慄然としつつ、グランコクマに一歩また一歩と近づいていた。 あとがき やっとこさグランコクマです! あとは大体お決まりの展開ですよね。すいません大好物なんですこういうの!(…) 途中でティアの存在とミュウをすっかり忘れてすいません。 ティアとミュウはティアがミュウにうっとりして、ミュウはティアの傍で遊んでいます。 ちなみにアニメみたいにミュウは飛んでませんよ。普通に誰かに持ってもらって歩いてます。 ティアがミュウを抱きかかえる頻度が高いです。宿でもミュウの面倒はティアが見ています。 ルークはたまにミュウにかまってやる程度で、アクゼリュス崩落前も一応ブタザルって呼んでいました。 いつか短編で気が向いたら書くと思います。書けるのか自分でも謎なので、期待はしないでやって下さいね。 ちなみにタイトルは「きたい」って読みます。心中の僅かな恐れという意味らしいです。 |