齟齬
ケテルブルクに向かった一行はジェイドの案でロニール雪山の事をネフリーに訊ねた。 ネフリーはディストが倒れていることをジェイドに告げ、まさか本当にずっとここで待っていたとはとルークは呆れる。 ディストは宿屋で寝かしていると聞いたジェイドはネフリーに兵士を連れてくるようにと言うと、宿に向かった。 宿に入るとディストはベッドの上で丸くなって横たわっている。 待ってよジェイド、と時折寝言が紡がれ、それにアニスが呆れ顔をした。 「……大佐と夢の中で追い駆けっこしてる」 「さて……。ちょっと彼から、ロニール雪山について聞きます。みなさんはちょっと外で待っていて下さい」 黒い笑みを浮かべたジェイドに、誰もが従った。 廊下でルークたちが待っていると、ディストのいる部屋から悲鳴が聞こえる。 そして最後にジェイド、ごめんなさーーーーーい!!と聞こえたかと思うと、中からジェイドが出てきた。 ジェイドは聞きだした情報を早速ルークたちに言うが、ルークは先程の声が頭から離れなかった。 「それはわかったけど、さっきの悲鳴……」 「ああ、なんでもありませんよ。それより行きましょうか」 明らかに何かあるジェイドにルークはそれ以上聞けなかった。 ロビーにルークたちが差し掛かると兵士たちの姿がある。 兵士たちにディストの身柄の拘束を頼んだジェイドは、空々しく口にした。 「さて。これで安心して明日ロニール雪山へ向かえますね」 「……あちこちで怖がられてる理由が分かった気がする」 ルークはがっくりと肩を下げる。 ディストの拷問で時間を食った一行は一晩ここで休息として休むことになった。 ルークはまたガイに髪を梳いてもらって、夜は談笑をして眠る。 ガイは眠ったルークの髪に触れた。ルークはすやすやと眠っていて気付かない。 「ルーク。俺は、お前を必ず救ってみせる。絶対にな」 雪がしんしんと降るケテルブルクの街は幻想的で、白い雪が闇の中で浮かんで見えた。 ロニール雪山に入る準備を十分に済ました仲間たちは山に向かう。 慣れない雪山でルークは何度となくこけかけ、終いにはジェイドに服を掴まれてこけた。 そんな中でガイは一度も足が雪に取られず、さくさくと進んでいくのだからアニスとルークが絶対何かあるとガイを疑い始めた。 ガイはそれに気付いていても会話に入ろうともしないし、無言を保ったままである。 そんな中、悲鳴のような声が聞こえてジェイドが昔亡くなった女性の亡霊の話を持ち出した。 ナタリアはそういうお話大好きですわ、と目を輝かせたがティアは馬鹿馬鹿しいといって歩きだす。 ルークはまさかティアは怖がっているのかと思い声をかければ、ティアは必死に否定し早く先に進もうと言いだした。 明らかに怖がっているティアに仲間たちは笑い、ティアは赤面する。 そうしてまた歩いていくと今度は人の声が聞こえた。それは六神将だ。 ルークたちは交戦を免れなかったが戦闘の所為で雪崩が起きて、六神将たちはそれに飲まれて行く。 ルークたちは丁度真下に足場があったため呑み込まれるのを逃れたが、六神将はない。 そこにいたアリエッタもラルゴもリグレットも誰もが死んだものと思い、顔を暗くする。 しかし先に進まなければならない。そうして歩くルークたちの目の前にセフィロトの入口が見えた。 セフィロトの内部に入り、いつものように操作をする。仲間はそれを見守り、ティアは自分を律していた。 装置を起動するたびに自分の体が何かにむしばまれている。 分かっていてもそれをやめないのは外殻大地を救いたいからだ。 ティアはワイヨン鏡窟で兄の体がぼろぼろだということを知った。 兄がそこまでしてやるというのなら妹の自分もそうするしかない。 必死に立つ事に神経を張り巡らせる。ガイの手が操作盤から離れると、ティアは安堵した。 すると緊張の糸が切れ、とうとうティアはその場に倒れてしまう。 「ティア!どうしたんだ!?おい、ティア!!」 倒れたティアにルークは必死に声をかける。ティアの顔は酷く青ざめていた。 ガイはそれを見下ろし、黙っている。ジェイドはその視線に何かあると思いながらも、ガイにティアを背負ってもらってその場を後にした。 ケテルブルクに到着するとノエルが待っていた。 アルビオールがケテルブルクの雪の所為で凍りついてしまい、アルビオールは動かないらしい。 そこでルークたちに一晩ここに泊まってほしいと伝えるとノエルは行ってしまった。 ルークたちはティアを部屋に寝かせると、ティアは目を覚ました。 「……わたし」 「ティア、おまえ倒れたんだよ。覚えてないか?」 ルークは心配した様子でティアを見て、ティアはそれを知ると迷惑かけたわねと謝る。 「ティア。やはり一度ベルケンドで診てもらった方がいいですわ」 「ナタリアの言うとおりだよ。倒れる何て相当じゃん」 仲間たちも時折辛そうにするティアの姿に気付いていた。 ティアもそれに漸く気付いて、わかったわ、と頷いた。 ルークたちはそれを聞くと安堵して、部屋に戻っていく。 そしてティアの部屋を出た廊下にはガイとジェイドの姿があった。 「ガイ。あなたも反論はありませんね?」 「…ああ」 ガイは短く返し、その場を去っていく。ジェイドは何を隠しているのか測りかねた。 翌朝、ルークたちはティアを精密検査に受けさせるためにベルケンドへ向かった。 ベルケンドの医者であるシュウと共にティアは医務室に消えていく。 そして検査が終わると、シュウはルークたちにティアのことを説明した。 ティアは障気に汚染された第七音素が蓄積しており、内臓をかなり痛めている。 汚染された第七音素を取り込んでいるのはパッセージリングを起動させる際にそうなるのだとシュウは語った。 ルークはそれに衝撃を隠せなかった。 このままではティアが死んでしまう。しかしまだアブソーブゲートの起動やラジエイトゲートの起動が残っているのだ。 ルークはティアのもとへ向かった。 ティアに外殻大地を降下する作業を言えたらいいのに言えない自分を責め、ティアは言えなくていいのだという。 ルークはティアにもっと本音を言ってくれたらと思いをぶつけるが、ティアは目を伏せた。 「……ごめんなさい。しばらく一人にして」 「いやだ。ここにいる」 ルークは薄々気づいていた。ティアがこうなったのはガイの所為だ。 ガイは一人だけベルケンドで精密検査を受けることを反対し、パッセージリングの起動を急がせた。 ティアは顔を見られたくないの、と悲痛に訴えルークは背中を向けた。 ティアがこうなったのは自分のせいだ。ティアが辛そうにしているのに気付いていたのにそのままにした。 ティアはルークにばか、と零し二人に沈黙が落ちた。 ティアは薬を処方してもらい、病院を後にする。 そうして外に出た先で、ルークはガイを見ると、彼は分かっていたように目を逸らした。 「ガイ!お前は知ってたんだな!ティアがこうなるって…!!」 「…パッセージリングを起動させるにはユリアの血縁者でなくてはならない」 ルークから怒鳴られてもガイの様子は変わらない。 相変わらず淡々としたもので、本当に血が通っているのか疑いたくなる。 ルークは怒りのあまり、ガイの胸倉を掴んでいた。 「そうだとしても、ティアの命が危険にさらされるんだぞ!?そんなの仲間にすることなのかよ!??」 「では、外殻大地はどうする?このままむざむざ落ちるのを見ろというのか」 ガイの言葉は全くその通りで、ルークは言葉に詰まった。先程自分が言った理由と一緒だ。 だからといって、ずっとそれを知りつつ語らなかった理由にはならない。 思えばガイの行動は不可解な物が多かった。いつもルークたちが問題に行き詰ると助言をし、導いてくれる。 しかし導いた結果がこれならば、意味がない。 ガイは自分を助けたのでさえ、何かを企んでいるからだろう。 実際にルークは訳のわからない腕輪を付けられた。 ガイと秘密の共有という形をとっているが、この腕輪に何かがないとは言い切れない。 夜中で見せたガイのあの姿はその方が自分を取り込めると思ったのだろう。 ルークはガイにこぶしを振り上げ、ガイはその手を容易に掴んだ。 それが悔しくてルークは乱暴に振りほどく。 「おまえは仲間なんかじゃない!二度と俺たちの前に現れるな!!」 「…ルーク、これはガイのせいじゃないわ。私も気づいていたの」 怒りをあらわにしたルークにティアは諌めるように口にする。 だが一度、疑わしいと思ってしまったルークは声を張った。 「ティアの心にガイが付け込んだんだろ!ティアは師匠のことで胸をいつも痛めてるから、それを利用して…!」 「ルーク…」 呆然とティアが言葉を失うと、ナタリアはルークと同様にガイを睨んだ。 「ルークの仰るとおりですわ!知っていてそれを告げなかったとはそういうことです!!」 「人の事なんだと思ってるの!?死んだって本当は胸なんか痛まないんでしょ!!」 アニスは見損なったと吐き捨て、侮蔑したような目をガイに向ける。 ガイはその視線を受け取り、踵を返した。 「どこへ行くんです?まさかヴァンに降るつもりですか」 「俺はお前たちから離れる。それだけだ」 ガイはそのまま姿を消していく。それをただ仲間たちは黙って見送った。 ティアのことと、ガイの脱退したということもあってルークたちはベルケンドで休むことにした。 ティアは今、宿屋で安静にしているが、ルークは憤りを隠せない。 「もっと早くジェイドの忠告を聞いとけば、ティアはあんなことにはならなかったのに…!」 「…どちらにせよ、ティアの場合そうなったと思いますがね」 ジェイドが肩を竦めてそう言った。ルークはその言葉を聞いて顔を上げ、ナタリアが非難する。 「ジェイド!それは一体どういう意味ですの!?」 「言葉のままですよ。ガイが言ったようにユリアの血縁者でなければ、パッセージリングが起動しないのは今までの様子を見れば明らかです。パッセージリングを操作できるヴァンに対抗できるのは彼女しかいません」 しかしそれは理解できたとしても許せる行為ではなかった。アニスはジェイドを睨んだ。 「だからってガイのしたことを許せって言うんですか!?そんなのおかしいです!」 「そうだぜ、ジェイド!黙っていい事には繋がらない!違うか?」 ルークに熱く語られ、ジェイドは嘆息する。 「それは同意見ですが、ガイが抜けたことによって我々はガイの行動を掴めなくなりました」 「…それがなんだよ。ガイが何しようが勝手じゃねーか」 ルークは眉を寄せ、ジェイドはルークに双眸を向けた。 「そういう訳には行きません。ルーク、あなたもガイの不可解な点に気付いているんじゃないですか」 「……」 ルークは地面に目を這わせる。黙ったルークにジェイドはやれやれと肩を竦めた。 「もう少し様子を見れたらガイの行動も見えたのかもしれませんが、今となっては解りませんね」 「大佐…」 「私は部屋に戻ります。では、また後ほど」 不安げに呼んだアニスにジェイドはその悩みを解決しようともせず行ってしまう。 何せアニスはガイに脅迫されていた。今回の事でアニスは両親を殺されるかもしれない。 ルークはそれに気付いて、どうしてもっと早くガイを信じていけないとは気付かなかったのだろうと自嘲する。 こんなにも、ガイは人の事に無頓着で、一番信じてはいけない相手だったのだ。 ガイは想定していたことだったが、あんなにもルークが辛そうな顔をしたのを見て胸を痛ませる。 あれではどっちが怒られているのか分からない。 しかし救うと誓った以上、ガイの足は止まることは許されない。 ガイはまずシェリダンに向かった。そこでアルビオールを借りて、ラジエイトゲートに向かう為だ。 ルークたちは恐らく今晩はベルケンドで休むつもりだろう。 ガイはシェリダン行きの船に乗り、船室で一晩眠った。 朝になり、シェリダンに向かうとアストンの姿がある。 相変わらずのガイの姿を見て、彼は何も聞いてこない。 「アルビオール三号機を借りたい」 「いいじゃろう。では、操縦者としてギンジをつけるからな」 アストンはあっさりと許し、ギンジもガイの事を聞いてこようとはしなかった。 ガイはそれに有難く思いながら、ギンジにラジエイトゲートに向かうように告げる。 ルークたちは重い空気が漂ったまま、宿屋を後にする。 体が弱いイオンはケテルブルクに休ませることにして、ルークたちもネフリーがいる領事館にイオンを送り届ける為にケテルブルクに降りた。 領事館にイオンを届けると、アッシュの姿が目に入りアッシュはルークにヴァンの討伐を頼むとどこかへ行ってしまった。 ルークはアッシュに約束し、決意を胸にアブソーブゲートへ向かう。 アブソーブゲートの内部に入り、仕掛けを解いて先へ進むと床が崩れた。 ルークはそれに驚くが、ティアは言う。 「外殻大地が限界に近付いているのかしら」 「……急ぎましょう。このまま世界を滅亡させる訳には参りませんわ」 ティアの言葉を聞いて、ナタリアは先へと促した。 さらに奥へと進んでいくとルークたちに地震が襲う。 この揺れはかなりでかい。ルークがそう想っていると地面は崩れ、仲間たちは散り散りとなって落ちていく。 ルークが再び気付いた時にはティアとナタリアの姿があった。 「大丈夫か、二人とも」 「ええ」 「なんとか大丈夫ですわ」 ナタリアはすこし顔を歪ませて、立ち上がる。そして周囲を見回す。 「どうやら仲間たちと離れ離れになってしまったようですわね」 「そうだな。油断せずに先へ進もうぜ」 ルークがそう言っている頃、アニスとジェイドは二人ですでに歩き始めていた。 「うーん」 「どうしたんですか、アニス」 きょろきょろと後ろを見たりするアニスにジェイドが空々しく訊ねる。 アニスはジェイドに顔を見上げた。 「ガイがもしかしたらついてきてないかなって思いまして…」 「ああ、彼は人を尾行するのが大得意ですからね。アニスが不安になるのは解りますよ」 「じゃあ!」 大佐にはガイがいるのかいないのか分かるのか、とアニスが期待を込めた目で見やればジェイドは言う。 「落ちた我々をガイが尾行できるとは到底考えにくいですし、今は安心していいですよ」 「…今はってなんなんですかぁ」 相変わらずのジェイドの言葉にアニスはがっくりと肩を下げる。これでは安心できたものではない。 「アニス。ガイがあなたに会いに来て両親を人質に取って命令するのが不安なのですか?」 「……当たり前じゃないですか!パパやママがいなくなったら、私…」 アニスは辛く顔に痛みを走らせ、ジェイドは言った。 「グランコクマにあなたの両親がいる限り、マルクト兵が彼らの身柄を守ります。ですから安心しなさい」 「大佐…!」 大佐って優しい。アニスがそう言って抱きつこうとした時だった。 「まあ、今度はマルクトがあなたの両親を人質にとってこき使うんですけどね」 「…最低です、大佐〜」 ジェイドの真顔であり明らかに本気だった。 アニスはそれに嘆息するが、ガイよりはましかと考えを改める。 ナタリアは背後を振り返りつつ、口にする。 「ガイはついてきていないようですわね」 「そうね。でも油断は禁物よ。ガイがヴァンについたかもしれないわ」 昨夜、決戦前の決意をベルケンドの宿で行った。 そこで明らかになったのはガイの抜け方があまりにも自然で、彼はこれを考えた上でティアのことを黙っていたのではないかと言う話がのぼった。 そうなればガイは元からヴァンに従うつもりだった可能性が高い。 ルークたちはガイに細心の注意を払って、前に進んでいた。しかしついついガイへの鬱憤が漏れる。 「出会った時から怪しいとは思っていましたが、これほど最低な方だとは思っていませんでしたわ」 「…彼も、思うところがあったのかもしれないわ」 「思うところって、なんだよ!あいつはただ仲間を見殺しにしようとしただけだろ!!」 辛く目を伏せたティアにルークは怒鳴った。ルークの激情を見て、ナタリアも黙る。 「ガイは俺たちを裏切ってたんだ!最初はあんないいこと言っといて、俺たちをいいように利用して騙してきた!その事実は変わらないじゃねーか!!」 「…そうね。だから彼とまた出会った時は戦いは避けられないと思っていた方がいいわ」 ルークはそれに目を見開く。だがナタリアも頷いた。 「そうですわね。今まで仲間として旅をして、ガイはわたくしたちの戦法を見抜いていますわ」 「かなり厳しい戦いになるわね。覚悟しておきましょう」 ガイと戦う。 そんなこと、出来るのか。 今までルークに優しい言葉を掛けたガイがルークの胸にあふれてくる。 あのガイを自分たちの手かけるなんて、ルークは想像できない。 しかし敵になるとはそういうことなのだ。 ルークの足はいつの間にか止まり、気付いたナタリアが声をかける。 「ルーク?」 「…今行くよ」 行くと言ってもルークの足取りは重かった。ルークにとってはガイが敵になって自分たちと戦うということが盲点だったのだ。 もしガイと戦うことになれば、勝てる気も、刃を交える勇気もない。 同じ理想を掲げながら、ガイが敵になるなんて思えなかった。 ルークたちが奥に到着すると、アニスとジェイドの姿がある。 仲間たちは顔を見合わせ、奥へ待つだろうヴァンとの対決へ意識を高めた。 ヴァンはルークを見ようとしなかった。 自分が待つと言ったアッシュが来なかった事でルークにレプリカ風情が邪魔をするなと罵る。 自分の存在を認めようとしないヴァンにルークは叫ぶ。 「あなたが俺を認めなくても……俺は……俺だ!」 「戯言を。――消えろ!」 ルークの一撃をあっさりヴァンは受け止め、薙ぎ払う。 ルークは受け身を取りつつ、地面に転がった。すぐに次の攻撃に備えて立ち上がる。 ジェイドが譜術をヴァンに放つが、ヴァンに掠りともしない。ティアもナイフを投げるがヴァンはそれを剣で弾く。 圧倒的な力がある。だが、ルークは負けるわけにはいかなかった。 仲間と力を合わせ、何とかヴァンを追い詰めると、彼は地面に剣を打ち込んだ。 「失敗作に、倒されるとはな……。ふふふ、ふははは」 笑い始めたヴァンに、ルークは注意深く構えていた。いつでも攻撃を受けても、避けることができ、攻撃を出来る様に身をかがめる。 「ふははははは、はっはっは……面白いではないか」 ヴァンは哄笑し、地核へと落ちていく。その姿を見た仲間たちは踵を返す。 地核に落ちてはヴァンも助からないだろう。一人足をとめたままのティアにルークは肩に手を置いて、先を促した。 パッセージリングにたどり着き、ティアに装置を起動させる。 しかしこれには問題があった。 「装置を起動させたとして、どうやって操作するんですかぁ?」 「今までガイが操作していましたからね。これは困りました」 だからあの時ああいったのにと言わんばかりにジェイドがルークをじっと見る。 ルークは気まり悪そうにしながらも、ジェイドを睥睨した。 「何が言いたいんだよ?」 「いえいえ、何も〜?」 見え透いた嘘をつくジェイドにルークは怒鳴ろうとするが、ナタリアの顔色が変わる。 「あちらをご覧になって!」 「…え?」 ナタリアが指を指したのは空に浮かぶ図面だ。 図面にあるセフィロトを連動させる線がラジエイトゲートに繋がり、全てのセフィロトにつながるのが見える。 ルークはそれに驚いて凝視していると、降下との文字が表示された。 「…これは…」 「ガイだ…」 目を見張ったジェイドに、ルークはぽつりとつぶやいた。 まさか、手伝ってくれるのか。そんな思いでルークは図面を見上げる。 「外殻大地がゆっくりと降下しています。それも問題なく…」 「じゃあ…ガイは…」 操作盤を見たジェイドが信じられない様子で口にした。アニスは注意深くジェイドを見つめた。 「安心するのはまだ早いわ。ガイの目的は兄さんを倒すことだった筈よ」 「…それが本当だとしたら、次にガイが取る行動がまるで分かりませんね」 ジェイドは眼鏡を押さえ、ティアの言葉に悩んだ様子だ。 「でもガイは俺たちを手伝ってくれた。そのことには変わりはないよな…」 「…ルーク。まさかとは思いますが、またガイを信じるなんて言い出すんじゃないでしょうね」 ジェイドにそう咎められて、ルークは目を逸らした。 仲間はそんなルークに嘆息し、ルークは仲間から距離を置く。 降下作業は順調に進む中、ルークの頭に突如傷みが走る。 <アッシュ……ルーク!鍵を送る!その鍵で私を解放して欲しい!栄光を掴む者……私を捕えようと……私を……> それは外殻大地が降下するのと同時だった。膝をついたルークに気付いたジェイドが声をかける。 「ルーク?どうしました?」 「ローレライが……」 ルークは言葉を言いかけ、立ち上がる。 「……いや、今はいい。それより、成功したことをみんなに知らせないと」 「ええ。イオンもノエルも、お父様たちも……。きっと心配していますわ」 気を取り直すように言葉にしたルークにナタリアも頷く。 ティアは一人ヴァンに胸を痛めていたが、ルークは目を向ける。するとティアはルークに言った。 「ルーク。これで……よかったのよ」 「わかった。……みんな、帰ろう!俺たちの大地へ!」 ルークたちはセフィロトを後にし、ケテルブルクに向かった。 そこでイオンに報告をし、イオンと喜びを分かち合う。 これでようやく世界が平和になった。ルークもそれに胸をなでおろすのだがガイの事が気がかりだった。 自分たちの外殻降下に協力してくれたガイは、まだ別の目的を持っている。 ジェイドは両国が協力し合い、ヴァンの部下もいない中どうせ何もできないだろうと口にしていたが、ルークの気持ちは違った。 やっぱり、ガイは仲間だ。 ティアにしたことは許されることではないけれど、自分に協力してくれている。 そう想うとルークはガイに会って、話をしたかった。 夜のあの優しいガイに話を聞けば、真相ははっきりする。そうルークは思った。 あとがき やっとガイが仲間に抜けたと思ったら、ルークはすぐにガイに会いたいと思ってます。 協力してくれたのはルークはガイが自分と同じ理想を掲げているからだと思っているからです。 でもジェイドはそれこそ真っ赤な嘘で何かガイが企んでいるような気がして疑っているといった具合です。 |