オールドラントでは四月なんてないですが、四月馬鹿設定で読んで下さいね。 それを踏まえてスクロールどうぞ! 世間では四月馬鹿だの、何だの言われてるが俺としてはあんなもの迷惑極まりないんだ。 嘘をつくことが今日一日許される。 そんなことで浮かれ足になって、へらへら笑う奴らが馬鹿みたいに映る。 大の大人がそんな様子で、いつも文句を垂れてくる連中にはとてもじゃないが見えない。 ま、もっとも一番浮かれてるのは目の前にいるこいつなんだが。 「なあ、ガイ! 聞いてるのか!?」 「宿題でも終わりましたか、ルーク坊ちゃま」 白い目を向けても坊ちゃんは決してひるまない。 それどころかにかっと眩しい笑顔を向けてきた。 「ああ、終わった! だから剣舞やろうぜ!」 「……」 はあ、と俺は大きくため息をついて見せる。ルークは今朝からこんな調子だ。 落胆しているのが分かるように大袈裟に肩を竦ませて、じろりとルークを見た。 けど、ルークはきょとんとしてしまいには首を傾げている。 どうやら俺がため息をついた意味がわかってないらしい。この様子だと疲れてるのか?と聞いてきそうだ。確かに疲れていることには間違いないんだが、俺はルークの目線に合わせるために屈みこむ。 「あのな、ルーク。いくら嘘ついてもいいって言ったって、限度があるだろう?」 「おれは嘘ついてねえ!」 この反応に全く予想していなかった訳じゃないが、またため息が漏れそうになるのを抑える。 こんなのはいつもの決まり文句みたいなもんで、そのせいで俺はいつもラムダスさんに小言を言われてるんだ。 ため息をつくだけ無駄で、俺は屈むのをやめて頭を振る。 「今日は一人の人に付き、嘘は一度だけ許される日なんだ。なのに、おまえと来たら俺に何回嘘ついたんだ?」 「……」 考え込んだようにルークが顔を俯ける。そして徐に両手を顔の真前に持ってくる。 ひょっとして数えてるのか。今日おまえが付いた嘘はざっと数えたところで指じゃ追いつかないぞ。 するとルークは目の前に持ってきていた両手をぱっと下ろした。数えるのはもうやめたらしい。 さて、今度はどんないい訳をするのやらと俺が思っていたら、ルークはきっと俺を睨みつけてきた。これは予想できなかったな。一体なんだ? 俺が僅かに目を丸くすると、ルークは大声を出す。 「そんなのおれは聞いてねえぞ! ガイのうそつき!!」 「うそつきってな」 俺は心臓がどきりとして 、つい頭をかいてしまう。それに本気でルークの奴が怒ってるんだ。 唸り声を上げそうな顔つきで、俺を睨め付けてる。 「メイドたちはそんなことおれに言ってねーぞ! もっとましな嘘つけよな!」 もっとましな嘘とは。おまえが言えた義理かよ。妙に肩の力が抜ける。 そう思っちまうが、ルークがあんまりにも怖い形相でいるから呆れるのは不味い。 そうしたらルークが喚いて回りに辺り散らかすのが目に見えてる。 ルークはすごい癇癪持ちだ。昔の面影は見る影もなく、俺はそんなルークが心地良いと思ってる。 感情を開けっ広げにして、裏表のないこいつに酷く安心する。それに困ることもあるが、少なくとも今はほっとしてる。 「別に嘘じゃないさ。暗黙の了解みたいなもんだ」 「またそうやって嘘つくのか!? もう騙されねえぞ!」 苦笑いを浮かべて言ってやっても、ルークは敵意むき出しだ。 どうやら俺に嘘をつかれたと思っているらしい。 俺に嘘つかれて“騙されたから”ルークは今怒ってるんだ。それに俺はルークの嘘に騙されてない。 嘘をついていい日の一番の醍醐味をルークは出来てないとなると、そりゃ面白くない。 ルークの機嫌が悪くなるのも頷ける。けど、もっとマシな嘘をついて欲しいと思わないわけじゃない。 あんなあからさまな嘘じゃ、奥様だって騙せないぞ。騙されてる振りくらいはしてくれるだろうが。 でも今更騙された振りをしたって、ただ火に油を注ぐだろうしな。 参ったなと思うとまた頭をがりっと俺はかいた。ルークは相変わらずじっと睨んでいる。 これはもう我儘に付き合うしかないか。 「とにかく、嘘はもう終わりだ。――それより、剣舞やろうぜルーク」 「!」 ルークが大きく目を見開いて俺を見上げる。 目は爛々と輝いていて、本当にこいつは分かりやすい。 さっきの怒りはどこへやら、すぐに霧散して行ったみたいだ。 「宿題、終わったんだろ」 「……おう!」 ルークの弾けんばかりの笑顔に釣られて、つい俺も口元が綻ぶ。 ぐいぐいと手を引っ張るルークの手がやけにくすぐったく感じる。 さて、騙されてるのはどっちの方やら。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――― あとがき ガイは騙す側の人間だから、嘘って言葉に結構過敏になってるイメージがあります。 ルークの嘘は可愛いもので、自分の方はとかいろいろ考えてそうですよね。 そんな二人が恋しいです。誰か私に下さい!(…) |